冷間鍛造(圧造)金型のコストの抑え方
目次
「金型のコストの抑え方」
冷間鍛造や冷間圧造で量産活動を行う際に気になるのが金型のコストですよね。
今回は金型のコストの抑え方について考え方や手法をまとめて行きたいと思います。
金型のコストを抑える為の考え方は試作段階の案件と量産案件とで大きく変わります。
(試作段階でも量産化が近かったり、生産数が多い製品であれば量産案件と捉えた方が良いでしょう)
ではそれぞれについて説明をしていきたいと思います。
1.試作段階の案件の場合
試作段階の場合「コスト」だけでなく「納期」も問題になることがほとんどかと思います。
納期に影響がなくコストダウン出来る手法を効果が高い順に説明していきます。
(1)転用出来る金型の有無
もっとも効果が大きいのはこちら。そもそも作る必要が無くせますので^^
切断工具などは管理がしやすく見つけやすいですが、
ほとんど流動していない古い製品の金型が使えたりすることに気づけなかったりすることは十分に起こりえます。
金型探しに時間を掛けてはもったいないですので、各圧造機ごとに金型管理をしっかり行っていく必要があります。
最近は便利なツールがたくさん出ていますのでそれぞれの会社にあった適切な手法を適用するのが良いでしょう。
ちなみに日新精機ではFileMakerというデータベースアプリケーションを使用しあらゆる条件で検索が出来る体制を整えています。
(2)改造出来る金型の有無
ちょっとした改造で使用できる金型があれば儲けもの。
特にあまり流動していない製品の金型だったりしたら最高です!
ただしこちらも金型図面が探し出しやすいように管理されている必要がありますね。
(3)数量
試作において予測していないトラブルはよく起きるもの。出来るだけスペアは持ちたいですよね。
金型屋としてもその方がありがたいです(笑)
しかしながら破損リスクの小さい金型をスペアで持つ必要はありません。
社内外の経験豊富な方からアドバイスをもらいながら生産必要量に合わせた金型を用意しましょう。
「万が一破損したらあの製品のあの金型を臨時で改造しよう」
「この部分が壊れても修理が出来るから大丈夫」
など、リスク管理も同時に行っておければ鬼に金棒です。
(4)金型構造
金型構造は複雑になればなるほど価格が上がってしまいます。
使用する部品手数がコストにそのまま跳ね返って来ますので、
出来るだけシンプルな構造を心がけましょう。
試作と割り切る思い切りも大事だと思います。
金型屋としては安全をみてフルスペックで製作させて頂けるとありがたいですが。。。(^_^;)
(5)公差設定
公差指定場所によっては校正済の形状測定機や画像測定機、三次元測定機などでの計測を行うことになりそれもコストアップの要因となります。
成形寸法に影響が出る部分以外の過度な公差指定は少ない方がコスト、納期の両面で有利となります。
近年は幾何公差の指定が入る図面も増えて来ました。
こちらについても必要部位以外は指定しないことをおすすめします。
(6)鏡面ラップ指示
鏡面ラップを指定する箇所が出来る限り少ない方が金型コストは抑えられます。
成形に関係ない箇所への鏡面ラップは控えた方が得策です。
成形エリアでも場所によっては研磨仕上げや▽▽▽▽程度の仕上げの方が成形結果がよくなる場合もあります。
成形品に合わせて鏡面ラップの支持するべき箇所を見極めましょう。
(7)材質選定
材質やサイズによって素材の価格は大きく変動します。
特に注意すべきポイントは3つあります。
・超硬合金のサイズ
大きい金型ほど影響が色濃くでます。予測される成形荷重から出来るだけ小さいサイズで収まるように設計しましょう。
・パンチピンやダイスピンの材質
早期折損などの可能性がなければSKH51で基本的には大丈夫だと思います。
SKH55 SKH57 YXR材などにするとそれだけで価格もやや上がります。
特にHAP材やASP材などの粉末ハイスや超硬合金は価格影響が大きいですのでご注意ください。
・コーティング被膜の有無
出来るだけコーティング指示も抑えましょう。
ただ中空ピンやピアッシングピンには付けて置きたいですね〜。
2.量産段階の案件の場合
量産段階の案件では上記とは考え方が変わって来ます。
必要な部分以外は出来るだけ削ぎ落とすことは同様に大切ですが、
それに加えて長期的にメリットとなる金型体制の構築と、
それぞれの金型の耐久性向上を視野にいれなければなりません。
(1)金型構造の見直し
消耗度合いの高い金型に関してはメンテナンス性や交換性の考慮が必要となりますので、
必然的に組み合わせ式金型にすることが多いです。
イニシャルコストはアップしてしまいますが消耗部位のみ入れ替えて長期的に使用することで、
最終的に大きなコストメリットが得られます。
(2)材質選定の見直し
試作時の材質選定と違いこちらは金型寿命を延ばす為の材質選定となります。
量産化に入っている時点で既に破損されている金型もあると思います。
その破損状況から寿命向上につながる材質選定を行って行きましょう!
特に超硬合金の選定は注意が必要です。
一般的にはG○(G7など)と指定されることの多い超硬合金ですが、
G○というグレードはJIS規格にもISO規格にも現在はありません。
同等と思われるグレードを選定し素材として使用することが実際です。
手間でも超硬は必ず各超硬メーカーさん(主にサンアロイ、シルバーロイ、ノトアロイ、マコトロイさんなど)
の材種名で指定し寿命カイゼンのPDCAが廻せる環境を作って行きましょう。
手間の分のコストは必ず回収出来ると思います。
引用元:サンアロイ工業様
(3)製造メーカーの転換
金型屋としては悲しい話ですが安く調達出来る金型部品であれば海外メーカーなどを選定するのも選択肢だと考えます。
それほど品質が要求されない金型部品であれば積極的に使うべきだと思います。
耐久性が求められる金型や、金型屋とコミュニケーションを取りながらカイゼンPDCAを廻していく必要があるような金型の転換は
トラブルの要因となり、結果安定生産が出来なくなってしまいます。
当たり障りのないシンプルなものを海外調達されては如何でしょうか?
ちなみに弊社では台湾大手金型メーカーから直接購入して販売することが可能です。
ご興味ある方はお気軽にお声がけくださいませ。
3.まとめ
金型の耐久性を取り巻く変化点とても多く、CAEが進化した昨今でも経験がモノを言う世界です。
試作や量産する製品に合わせて適切なジャッジをすることが肝要。
それには一人の力では足りません。様々な方とのリレーションが肝になるかと考えます。
そして金型寿命向上に向けたカイゼンPDCAを愚直に廻し続けること。
面倒と思えるような積み重ねが必ずコスト低減につながると信じています。
奥深い冷間鍛造、冷間圧造を楽しみながらコストも終えていっちゃいましょう!
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