ブログ

高精度圧造品の問題点とその解決方法

ヘッダーの冷間圧造からねじ成型は始まりましたが、多くのネジメーカーは今ホーマーによって自動車パーツやネジ付きの部品を生産しています。塑性加工を用いてのパーツ成型は経済性の良さ、品質・強度の高さで切削加工から無切削への流れが大きくなっています。特に最近では、コストダウンのために後加工を無くす無切削の要求が強く、これは技術的にかなり難しく、各メーカー日々努力をしています。その難しさの原因の理由は、1・素材条件、2・成型工法、3・金型などがあります。この問題を解決するために機械的な工夫が色々と必要になり現在では機械メーカーとユーザーが協力して問題解決をしています。

1・素材の問題

冷間加工に使われる素材は、ごく少数の塑性加工が可能な素材だけでしたが、近年その素材の範囲が大きく広がり難成形材のベアリング鋼(SUJ2)も超球状化焼鈍を施し冷間ホーマーすることにより、ミニュチュアベアリングが圧造されています。また、後加工の切削仕上げを出来るだけ簡単にするため、既に鉛を含有した鉛快削鋼まで成型されています。難成形品の中で、特に深穴あけ・ホーロー部品のTIR・割れが起こり易い形状品・カップ状製品で底厚の薄い製品などの材料条件は、素材メーカーとの協力が必要です。最近の事例としては、S48CL材(フル鉛)での難成形に成功しています。ほかにも、使用目的に合わせて非鉄・SUS・ニッケルなど冷間圧造用の新素材として日々開発されています。

2・成形工法

多段式ホーマーでは、工程数が多くなる程、成形法を高精度にするための工夫が色々できます。複雑な高精度部品の製品では、後加工が必要なことが非常に多いため精度及びコストの問題を解決するには、出来るだけ効率の良い方法を考える必要があります。

効率の良い方法の内容

  • 後工程をワンチャックで出来るようにし、切削仕上げする時の工程数を減らします。
  • 厳しい同芯度(同時加工を必要どする)の場合、無理に成形するとむしろコストが高くなります。
  • 金型の寿命をカバーするために圧造荷重のバランスをよくします。
  • 削り代を少なくするために、サイジング工程による仕上げ成形をします。

また、二体合わせ部品の一体化や異形のため切削が難しい製品に対応する場合、複合成形及び切断面を研削したブランクを中間焼鈍を施し機械に、再投入するリフィーダー方式が高精度成形法として多く用いられています。また、多段ホーマーの機能を使い中空部の成形と両サイドから横穴加工などを施した成形法も幅広く開発されています。

3・金型

加工法は設計者により異なりますが、忘れてはならない基本的な問題があります。

例・ホーロー部品の高精度成形工法に対する注意点(穴の芯振れ精度を出す)

①・ダイス、パンチ共締め付けてはいけません。

対策

ラムと摺動部が高精度であってもダイ・ダイブロックの穴。パンチ・パンチケースの穴には、H7程度の公差があります。また少しでも使用した物は穴の口元が摩耗します。そのためこれまでの押しネジでロックしたとき金型は下を向きます。そのためダイス・パンチ共に底面は上方向に隙間が開きます。前から圧力が掛かってしまうと、すき間の分だけ動こうとします。それでは高精度のパーツは出来ません。またインダイ成形の棒パンチは曲がります。そこで、締め付けない状態でも確実に保持できるピンロックによるセットが開発されました。更に開発された方法にギヤーロックもありますが、この方法はコスト的にピンロックより安くその上従来の傾斜付き押しネジのダイスも使用出来て軽くセットしても決してゆるまないので、機能的にはピンロックと同じです。

②・穴あけピン(パンチ)のセットは仕事前に真っすぐである必要があります。

対策

穴あけパンチを無理にセットすると曲がった状態でセットする可能性があります。穴あけパンチも自然に真っすぐなるようにセットする必要があります。

③・前工程で穴あけパンチの先端が、正確にはまるガイドが必要です。

対策

パンチにはわずかにクリアランスがあり、端面の状態が悪いと穴加工は曲がります。そこで端面には必ず、前工程のKOピンなどで正確なガイドセンターを付ける必要があります。

④・前工程のブランクのフローラインが座屈してはいけません。

対策

前工程のフローラインが、座屈しているとそのラインにそって穴が曲がる可能性があります。従って素材径の選定や材料条件もシビアにする必要があります。

⑤・ラムに偏荷重が掛からない工程設計である必要があります。

対策

多段ホーマーの場合、各工程に掛かる圧力が違うため全く偏荷重の掛からない工法は不可能に近いです。この問題解決のため、ラムの振動防止等の開発をしているがゼロにすることは難しいです。そこでガイドポストシステムを使用します。この方法を使用した場合、ラムは前死点で振動を強制的に止められます。

小型ホーマーではMPF-510型から、大型ではBPF-560型まで使用され自動車のスプライン付きギヤーシャフトなどに広く使われています。

⑥・減面率に無理のない必要があります。

対策

減面率が少ないと穴の曲がりは大きくなります。これに対して太い穴をあけ外径を絞り成形する方法など、色々な工夫が必要です。また、クーラントオイルの逃がし穴の設け方など、油のかけ方まで工夫することが重要になります。

4・切断

切断(シヤーカット)はホーマー加工において、とても大きなテーマになります。どの機械メーカー・ユーザーも解決したい問題となっているようです。長い時間をかけて色々な方法が試されてきましたが、結果としてフラットできれいな断面を得るには次の条件を満たす必要があります。

①カットスピードが早い必要があります。

条件①について

数十年前に、ナットホーマーを開発したときハンマーカット(フライングカット)を使い瞬間的な切断スピードを10倍程度速くしました。しかし、端面はキレイに切断できる反面、ショックによる切断工具の劣化と切断機構部の耐久性に問題があるため、カム機構でのスピードアップと剛性強化による高精度切断により、段替え時の作業性も含めてワンタッチ式が主流になっています。

②クイル・ナイフと素材のクリアランスを少なくする必要があります。

条件②について

矯正ローラー・送りロールにより変形を防ぎ、またインラインドロワーで曲がりや傷の除去対策をして、出来るだけ少ないクリアランスの素材を使用します。

熱間ホーマーでは、当初からグリップ式クイルによるグリップ切断が採用されています。

グリップフィードも30mm径まであり、素材の変形を防いだり正確な切断ボリウムの供給ができます。熱間ホーマーでは、インダクションヒーターの手前に設置し冷間用コイル材を直線矯正して、ホーマーに1300℃まで加熱して送り込みます。

毎分200個の速さで、PF-560型ホーマーまで用いらてれ正確な断面ボリウムを得られるため、密閉鋳造などの金型寿命の延命ができます。

③クイルポケットとクイルとのすき間を無くす必要があります。

条件③について

すき間を無くすには油圧を使った方法が良いです。この方法はクイルの傾きを完全に防ぎ、脱着もワンタッチのためクイルの再研磨も簡単に出来ます。その結果、美しい切断面が保たれます。

④クイルとナイフのすき間は、材質・硬度などの素材状態により適性なすき間にする必要があります。

条件④について

クイルとナイフのすき間を適性なものにするには、材料条件に合わせたデータ取りが必要になります。AA1008アルミやO材銅の破断面を無くしたい場合、ナイフ・クイル・ストッパーがゼロクリアランスに保ち、再研磨したナイフが用いられる機構が大切になります。

⑤ストッパーと素材との擦り傷を無くす必要があります。

5・圧造

偏芯・偏肉対策については3項の金型で述べましたが、もう一つのホーマー高精度圧造における問題点として、工具の初期圧縮ひずみや圧造開始と共に上昇する温度によるカップ状製品の低厚・長さの違いがあります。今までは、ホーマーを何度も停止させてパンチの矢板調整や金型のスペーサー交換などで対応していましが、パンチの電動式出し入れ装置が開発され改善しました。これは熱間ホーマーで採用されることが多いです。熱間の場合は、ホーマーを止めてしまうと素材がすぐに冷却されるため運転しながら行わなければならないからです。熱間では1工程と2工程で、冷間では全行程で調整することができます。特に、フランジ径の大きいナットやトリーマーではパンチとダイの衝突防止もされ工具も長く使用出来ます。

6・打痕対策

高精度品は、これまで述べた問題以外にもホーマー出口の打痕対策を忘れてはいけません。これは完成品だけではなく、後加工のある製品でも切削するから大丈夫というわけではありません。打痕がある場所をチャッキングしてしまうと、芯振れが起こり不良品が出るなどの問題があります。そこでSPコンベアーやソフト投入機などを導入し問題解決をする必要があります。

7・まとめ

高精度圧造品における問題点とその解決方法について述べましたが、最も大事なことは有能な人材です。これからはニーズが色々と変化し、技術革新が急速に進む為いかにそれを学び生かす事ができる人材に恵まれるかが大切になります。しかし、折角得られた人材が3Kの職場から解放され、高精度圧造品に必要なデータどりをしてそれを活用・水平展開ができる職場環境が大切になっていきます。これから益々進む高齢化・国際化・高付加価値化の新しい3Kに対して、どうのように対応していくかを皆様と共に考え精一杯お手伝いしたいと思います。

関連記事

最近のコメント

    アーカイブ

    カテゴリー

    ページ上部へ戻る